1minute Projection Mapping Competition / TOKYO LIGHTS 2022総評

TOKYO LIGHTS 2022総評

2021年に東京に会場を移して初開催し、2回目となった今回は、台風の影響で初日のみの実施となってしまいました。参加してくれたクリエイターのみなさん、そしてご来場され上映や祭典を楽しみにして下さっていたみなさんにも、大変申し訳なく、関係者一同残念に思っております。

さて、今回設定されたコンテンツ制作テーマは「LIFE」でしたが、昨今の時流を鑑みたもので、重く考えさせるテーマでした。応募された作品にはそうしたクリエイターの思慮や想い、そしてメッセージが多く詰まっていました。

多様な価値観が生まれ、変化する時代の中で、それを体現したかの様な作品群の数々に、観客も審査員も、そして参加したファイナリストのみなさんも深く感じ入るものがありました。またコンテンツの技術レベルも非常に高く、プロジェクションマッピングの表現が広がり、さらに深まる過渡期として非常に刺激的でした。

審査員8名による審議も例年以上に白熱し、長時間にわたる議論が行われました。ファイナルに残った作品はどれも素晴らしく、採点や評価、順位を付けることは大変難しい作業でしたが、厳正に審議されましたのでその内容について、審査員を代表して受賞作品の紹介と簡単な評価ポイントをまとめました。


GRAND PRIZE(東京都知事賞):作品名【Elemental constructions】
EPER DIGITAL(ハンガリー)

GRAND PRIZE(東京都知事賞)に輝いたのは、EPER DIGITAL(ハンガリー)による作品「Elemental constructions」でした。

この作品はこれまでのプロジェクションマッピングのイメージと比べても異質で、多くの人に新鮮な驚きと、強い印象を残しました。音楽と同期させながら、赤青黄の原色と3DCGでのシンプルな表現は飽きることなく聴衆の心を躍らせ、強く魅了しました。単純な色と図形は徐々に混じり合い、その様は多様な価値観が徐々に溶け合って一つの世界観を築いていく様にも感じられました。審査員の間ではテーマのLIFEについての提示が弱いという点で様々な意見が交わされました。最終的には完成度の高い新鮮な表現で多くの人の心を動かし、抽象性の中にもテーマを感じさせたということで評価されました。


SECOND PRIZE (TOKYO LIGHTS賞):作品名【Owari (終) ・Tsuzuku(続)】
DecideKit(タイ)

SECOND PRIZE (TOKYO LIGHTS賞)とオーディエンス賞の2冠を獲得したDecideKit(タイ)の「Owari (終) ・Tsuzuku(続)」です。

この作品はテーマについての明確なストーリーと熟練ともいえるような映像制作技術と構成、全てにおいて高い評価がされました。昆虫の変態を軸に命が生まれ羽ばたく循環を描き、建物全体が生命の繭となり、それが羽化し羽ばたく様はとても美しく、見る人の心にゆっくりと染み入るものがありました。


JURY PRIZE(審査員特別賞):作品名【Mutate / Evolve】
RESORB(ドイツ)
JURY PRIZE(審査員特別賞)はRESORB(ドイツ)が製作した「Mutate / Evolve」という作品で、AIアルゴリズムで生成された生命体が描かれ、それらは突然変異したかの様でありながら、建物と溶け合う様にも設計されていました。技術的にはまだ過渡期の表現であるAI技術を使ったものではありますが、複雑に絡み合う様や透明感のあるビジュアルは命の生々しさ、強さを感じさせ、今の時代を示唆する様でもありました。


Tokyo Tokyo PRIZE(Tokyo Tokyo賞):作品名【Resistance】
Kurbas Production(ウクライナ)

最後にTokyo Tokyo PRIZE(Tokyo Tokyo賞)は「Resistance」を作ったKurbas Production(ウクライナ)が受賞しました。今回の重いテーマに対して、彼らの置かれた環境を批判ではなく、客観的な描写として柔らかに、そして高い技術と独特の世界観で描き切っていました。また今の時代に正面から向き合った作品で、自らの存在を伝えようとする姿勢は多くの観客や審査員の胸を打ちました。


以上は、受賞者についての講評となりますが、その他にも評価が高い作品が多々あり、甲乙つけ難い素晴らしい内容でした。

今回55の国と地域からのエントリーを頂きましたが、国や立場を超えた映像表現の競演は、世界の意識を大きく広げて、そして改めて俯瞰して整理し、ゆっくり凝縮していく行為の様に感じました。多様な価値観は、時に似て、時に異なりながらも姿を変え、そこには確かに存在し、それを知り認める時間はとても尊く、こうしたプロセスは芸術や文化がもたらしうる大きな価値であり、人間の可能性を示唆するものだと心を新たにしました。

最後に、毎度申し上げていることではありますが、この大会はクリエイター達の参加するモチベーションとその作品によって支えられています。その想いや時間に報いるためにも、クリエイターと観客の双方が前向きなエネルギーの交換がされる大会、そして表現者にとっても魅力的な場づくりをしていく所存です。皆様と一緒にさらに成長していきたいと関係者一同で考えておりますので、今後とも何卒ご協力、ご参加の程よろしくお願い致します。

すべての参加されたクリエイターの皆様、ご協力頂いた皆様に、改めて深く感謝を申し上げます。

1minute Projection Mapping Competition
総合プロデューサー 石多 未知行

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